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このページではよくあるご質問をご覧いただけます。

平成28年3月9日午後3時30分、大津地裁は、「高浜発電所3号機及び同4号機を運転してはならない」との仮処分命令を出しました。この決定についてインターネット上で様々な意見が飛び交っていますが、決定に至る過程をよく調べていない意見があったり、中には【質問5】のように司法制度を理解していない意見も散見されます。そこで、よくある意見や疑問に対してQ&A形式でお答えさせていただきます。

高浜3、4号機仮処分決定(大津地裁)Q&A

平成27年(ヨ)6号 決定 1

平成27年(ヨ)6号 決定 2

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問1 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問1】
今回の決定では「主張及び疎明が不十分」というフレーズがたくさん出てきますが、関西電力には十分な主張や疎明を行う機会が与えられていたのでしょうか?

【回答1】
住民が今回の仮処分事件を申し立てたのは平成27年1月30日のことです、その後、4月20日、7月9日、9月29日、12月15日と4回の審尋期日が開かれました。この間、裁判所は関西電力に対して、住民の主張に対して反論することを促し続けました。これに対して関西電力は、合計843頁の主張書面と、219点の証拠を裁判所に提出しました。
ただし、このうち241頁の主張書面と105点の証拠は、最後の審尋期日の後の平成28年1月29日になってようやく提出されました。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問2 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問2】
住民側はどのような主張をしたのですか?

【回答2】
住民側は、高浜3、4号機の運転によって、人格権が侵害される具体的危険があることを主張しました。人格権とは、生命、身体などの人格的利益を侵害されない権利のことです。
そして、人格権侵害に至る具体的危険性として、新規制基準が不合理であること、地震動の想定が過小であること、津波想定が不十分であること、使用済み燃料ピットが堅固な施設で覆われていないこと、実効性ある避難計画が立てられていないこと等を主張しました。

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【質問3】
関西電力は、住民の主張にきちんと反論しなかったのですか?

【回答3】
期日において裁判所と関西電力との間では次のようなやりとりがよく行われていました。裁判所は、関西電力が住民側の主張と噛み合った議論をしていないと感じていたようです。
裁判所「住民の主張に噛み合う形で反論してください」
関西電力「当社の安全取り組みを説明することが、人格権侵害の具体的危険がないことの論証になると考えています」
裁判所「住民はその取り組みに対する疑問を提示しているので、その疑問に対する反論をしてほしい」
関西電力「検討しますが、まずは当社の安全取り組みを説明します」

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問4 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問4】
平成27年12月に高浜3、4号機の再稼働を認めた福井地裁の異議審決定は200頁を超えるものでしたが、大津地裁の今回の決定はその3分の1程度の分量しかありません。関西電力が提出した証拠を十分に検討したのでしょうか?

【回答4】
福井地裁でも大津地裁でも住民は原発事故によって住民の人格権が侵害される危険性があると主張しました。こうした場合、住民サイドは人格権侵害が現実のものとなる可能性をいくつも主張することになり、裁判所が住民の申立を却下するときは、主張されている可能性の全部を否定する必要がありますが、住民の申立を認めるときは、主張されている可能性のうちの1つを認めれば足ります。ですから、再稼働を認める決定よりも再稼働を認めない決定の分量の方が少なくなるのは当然なのです。特に今回の大津地裁の決定では、関西電力の主張と疎明が不十分であるという判断でしたからなおさらなのです。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問5 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問5】
一地方裁判所の裁判官が国のエネルギー政策にストップをかけるような裁判ができることはおかしくないですか?このようなことができないように法律を改正するべきではないですか?

【回答5】
裁判所は、多数決原理の決定が少数者の権利や利益を侵害する場合に、その誤りを是正することを期待された国家機関です。そのために裁判官一人ひとりには、法律と良心に従って裁判をする権限が与えられています。このことが我が国の三権分立の根幹の一つを成しています。ご質問の意見は、民主主義における裁判官の役割を理解せず、三権分立の根幹を破壊しようと言ってるに等しい暴論と考えます。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問6 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問6】
今回の大津地裁の決定は、福井地裁の異議審決定と反対の結論でした。裁判所ごとに判断が異なることは司法に対する信頼を損なうことになりませんか?

【回答6】
日本の裁判官には職権行使の独立が認められており、一人ひとりが法律と良心に従って裁判する権限を認められています。自分以外の裁判官が行った裁判が間違っていると思うのであれば、それとは違う裁判を行うことが憲法上認められています。このことがひいては国民の権利保障に適うというのが憲法の考え方です。一審の有罪判決が高裁で逆転無罪判決になることなどは同じ証拠で裁判官ごとに判断が変わる好例ですが、これと同様のことは同じ審級でも起こりうるのです。裁判官ごとに判断が異なるのはむしろ司法の健全さを示すものなのです。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問7 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問7】
裁判官は原発の科学的な安全性については素人だから、専門家が検討した結果を尊重するべきではないのですか?

【回答7】
このような考え方は司法の責任放棄に繋がるものです。原発の危険性を住民が訴える裁判は昔から数多く提起されてきました。これに対して多くの裁判では住民の訴えを退け、結果的に原発の安全性にお墨付きを与えてきました。こうした裁判では、ご質問のように、専門家の判断をほぼそのまま尊重し採用してきました。しかし現実には福島第一原発事故が起きました。何万人もの人々が故郷を失い、家畜が白骨化したゴーストタウンが広がっています。専門家の判断を尊重するべきという考え方は、福島第一原発事故から司法として何も学び取ろうとしない旧態依然とした考え方で支持することができません。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問8 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問8】
仮処分命令を出す必要性があったのでしょうか?

【回答8】
原発が再稼働している以上は事故の可能性があり、事故が起きた場合に著しい損害が生じることは明らかですから、仮処分命令を出す必要性は優に認められます。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 質問9 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

【質問9】
今回の大津地裁決定によって関西電力は予定していた電気料金の値下げを見送りました。値下げを期待していた市民はどうしたらよいのでしょうか?

【回答9】
平成28年4月1日から電力の小売りが完全に自由化されました。これによって、たくさんの電力会社の中から生活スタイルに合わせた最もリーズナブルな電力会社を選択することができるようになります。自然再生エネルギーを重視した電力会社を選択するといったこともこれからは可能な時代になります。多様な選択肢の中から最もニーズに適した合理的な選択をして頂くことができると考えています。

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